他者説得と自己説得の違い~開業融資の相談事例より~

相手と自分の優先事項が異なる場合がある

横から目線の経営参謀・洞口幹生です。

他者説得と自己説得の違いについて、私の仕事の事例を用いて書いていこうと思います。

説得というのは、「自分の言葉や行動を相手が受け入れることでその相手の行動や感情に変化を起こすこと」だと思います。

仕事やプライベートで、説得をする場面は誰にでもあるのではないかと思います。

今回書いていく私の事例は、少し前に対応した金融機関との相談の場の話です。

こちら側(お客様側)の第一のニーズは、早期に審査結果を得ることでした。内装工事の請負契約の日が迫っていたためです。
契約して早期に材料の発注をしないと開業に間に合わない…という状況がありました。

銀行側は、「他行さんほどのレートではご用意できないと思われますが…」と前置きがあった場面もあるため、第一のニーズはおそらく一定の金利条件をつけることだっただろうと思います。

つまり、お互いの優先事項が違うわけです。

こういう場合の説得方法があります。

相手が1番目に欲しいものを渡す代わりに2番目を譲ってもらう

今回の場合、金利条件について細かく言わない代わりに、審査回答の期限を短く切ってしまうという取引をすることで、お客様側の目的が果たせるように持っていくことができました。

その時の会話を書き起こしてみます。

洞口「金利は御行の基準通りで構わないので、審査回答を2週間ほど早めていただけると助かります。
◯◯日までに契約と発注をしないと、お客様の開業が大きく遅れるそうです。」

銀行「事情はわかるのですが、決裁権のある役員との会議が◯◯日なので、どうしても間に合わないのです。」

洞口「そうなのですね。
しかし、大きく遅れることをポジティブに捉えると、金融機関選びに時間を使えることになります。当然こちらは金利条件の良い貸出先を提案することになりますから、御行とのご相談自体をゼロベースで考えることになります。」

銀行「いやいやいやいや、それはちょっと待ってください!」

洞口「無理なことを申し上げてしまったかもしれませんが、私は御行の決定に従うつもりなのです。
御行のスケジュールのままで進めて開業が遅れて他行を検討する方向か、役員様のスケジュールを変更して空けて会議を挟んで進めていただく方向か、どちらがよさそうでしょうか。」

銀行「わかりました。役員に連絡して調整して、改めてお伝えいたします。」

洞口「よろしくお願いします。」

大切なのは、相手に決めてもらうこと。つまり、他者説得ではなく自己説得をすること。

「こうしなさい。」と命令や指示を出すわけではないのです。これは他者説得です。

「◯◯と△△がありますが、どちらにしますか?あなたの決めた方針に従います。」
という形で、相手が必要性などを認識して選択して、相手が自分自身を説得して、相手に決めてもらいます。これが自己説得です。

人間の心理として、他人から言われて受動的に取り組むことよりも、自分で決めて能動的に取り組むことの方が、モチベーションが高く成果も出しやすいです。

仕事だけでなく色んな場面で応用ができることなので、ご紹介しました。